2023年1月6日に東証により、実質的な支配力を持つ株主を有する上場会社(以下、従属上場会社)を巡る最近の事例が示唆する問題点、支配的な株主と従属上場会社の少数株主との間の利害調整の在り方や、少数株主保護の枠組み等について議論を行うため、「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」(以下、本研究会)が設置されており、設置後は、本研究会は6回開催されており、直近では2024年10月27日に第6回本研究会が開催されました。
本稿では、直近で開催された第6回本研究会の概略を取りまとめております。
親子上場を巡る動向
最近10年程度における、上場子会社の数・割合(下表①)は、親会社による完全子会社化などにより、緩やかに低下傾向を示している一方で、20%以上~50%未満保有の大株主を有する上場会社(下表②)は、上場後の支配従属関係の形成などにより、緩やかに増加傾向となっております。
親子上場等については、2007年に東証から「親会社を有する会社の上場に対する当取引所の考え方」が示されて以降は、特段東証としてのスタンスは明示されていない中で、特に最近時は、上場子会社を有する上場会社における開示や、親会社を有する上場会社における開示などにおいて、主として少数株主保護に関する開示の強化を促進させる方策が採られております。

「親子上場等に対する考え方と今後の方針」(案)の概略
第6回本研究会において、上場企業から「グループ経営の在り方に関する検討を進めにくい」などの意見が出ていることを踏まえて、今後、親子関係・持分法適用関係にある上場会社において、グループ経営や少数株主保護の在り方の検討や、株主・投資者への開示の充実が自発的に進んでいくように、東証として改めて親子上場等に関する考え方や今後の方針についても整理して公表する方針案について説明・討議されました。

複数人の研究会参加メンバーから、特に上表③に関して、2023年12月に、持分法的用関係にある上場会社に対しても、記載上のポイントを整理して開示を推奨しているものの、20%以上~50%未満保有の大株主(個人株主を除く)を有する上場会社の数が1,000社程度存在しているにもかかわらず、開示を行った企業が非常に限定的な状況を踏まえると、持分法的用関係にある上場会社の開示を強化・促進する必要がある旨の意見が出ていたことが特徴的といえます。
今後は、第6回本研究会において検討された内容を踏まえて修正された「親子上場等に対する考え方と今後の方針」について、年明けを目途に上場会社向けに案内される予定となっております。
上場準備会社においては、特に上場時に親子上場や持分法適用関係にある上場会社の存在が想定されるような場合は、引き続き留意が必要です。