2024年6月21日に、「規制改革実施計画」が閣議決定されました。
これは、規制改革を総合的に調査審議する内閣総理大臣の諮問機関である規制改革推進会議が取りまとめた答申等により示された規制改革事項について、政府として計画的かつ着実な実施を図るため担当府省や実施時期を定めたもので、スタートアップの資金調達の緩和に関する内容(以下、当該緩和)が含まれております。
当該緩和の概略等について
当該緩和では、非上場株式の発行・流通の活性化という観点から、発行(売出し)価額の総額が1億円以上における少額募集の際の有価証券届出書の取り扱いについて、スタートアップ企業の資金調達に係る情報開示の負担軽減を目的として、下表の内容で変更検討案が示されております。
開示の簡素化としては、2号の5様式の有価証券届出書の開示項目について、「第三部 企業情報」の内容を会社法上の事業報告と同程度の記載とすることや、「第六部 特別情報」の最近5事業年度分の財務諸表のうち、「第4 経理の状況」で記載したもの以外の3事業年度分を削除するなどの変更について、既に金融庁の金融審議会「資産運用に関するタスクフォース」において議論されております。
なお、上記変更の実施時期としては、2024年度に検討、結論が出次第速やかに措置することが公表されており、2023年までの10年間で5件となっている少額募集の利用が今後促進されることで、スタートアップの資金調達に資することが期待されます。
ストックオプション・プールの新設について
国内投資拡大に繋がるイノベーション及び新陳代謝の促進に向けた、中堅企業・スタートアップへの集中支援等の措置を実施する目的で、2024年2月16日に「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」が閣議決定された後に可決・公布され、スタートアップがストックオプションを柔軟かつ機動的に発行できる仕組みであるストックオプション・プールが可能となりました。内容としては、設立してから15年未満の株式会社がストックオプションを発行する場合、株主の利益の確保に配慮しつつ産業競争力を強化することに資する場合として経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けた場合に、以下の2点が適用されます。
1.ストックオプションの権利行使価額及び権利行使期間の決定について取締役会に委任ができる。
2.株主総会により取締役会に募集事項を委任できるストックオプションの発行期間の制限がなくなる。
「スタートアップ・ファイナンス研究会」のとりまとめの公表について
2022年11月に策定された「スタートアップ育成5か年計画」において掲げられた、5年後にスタートアップへの投資額を10兆円規模にする目標の実現に向けて、スタートアップのファイナンス環境に係る課題と今後取り組むべき施策の方向性について検討を行う目的で、2023年11月に「スタートアップ・ファイナンス研究会」が設置され、スタートアップの成長環境を踏まえた諸課題について議論されました。今般、これまで行われた議論の結果をとりまとめた内容が経済産業省より公表されました。
本稿では議論状況の概略を取りまとめております。