市場区分の見直しに関するフォローアップ会議

 東証は2022年4月4日に、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を支え、国内外の多様な投資者から高い支持を得られる魅力的な現物市場を提供することを目的として、市場区分を再編しました。
 今回の市場区分の再編は、あくまでも上場会社における企業価値向上の実現に向けた「スタートライン」であり、再編後も継続的にフォローアップが必要であります。
 市場区分見直しの実効性向上に向けて、施策の進捗状況や投資家の評価などをフォローアップし、上場会社の企業価値向上への取り組みや経過措置の取り扱い、およびベンチャー企業への資金供給などに関する追加的な対応について、東証に助言することを目的とした「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議(以下、本会議)」が開催されました。
 本会議は東証を事務局として、大学教授、事業会社のCEOやCFO、運用会社役員および経済研究所の役員等を含む9名のメンバーで構成され、金融庁と経済産業省がオブザーバー参加しております。
 2022年7月29日に第1回が、その後2022年9月9日に第2回、2022年10月5日に第3回が開催され、今後も本会議は継続的に開催される予定です。
 本稿では、第1回から第3回の本会議の検討状況等の概略を取りまとめております。

第1回本会議 

 東証より下表のような各テーマおよびそれらに関する現状分析が示され、本会議におけるフォローアップの内容や方法、および見直しの実効性を確保していくための取組等について議論がなされました。
 出席の各参加メンバーからは、「主な現状分析」を踏まえて様々な意見やコメントが出ております。
 複数のメンバーが言及していたコメントや、特にIPOに関連したコメントとしては下記が挙げられます。
 
 ・プライム市場とグロース市場と比較して、スタンダード市場の位置付けが中途半端で曖昧な印象
 ・上場維持基準未達の会社の猶予期間については、明確に期間を設定すべきではないか。また、計画の進捗を開示するようなことも必要
 ・市場区分とは関係無く、英文開示は重要
 ・グロース市場は、規模も小さく流動性も低いため、機関投資家が積極的に投資してないことが課題。機関投資家の参入を促進するため、大型IPOや上場後の大規模公募増資案件の実績作りが肝要
 ・グロース市場には余りガバナンスが求められてない印象があるが、事業リスクが高い会社も多いため、しっかりとしたガバナンスが必要
 ・グロース市場では、東証が定める適時開示基準以上に、より積極的に早めに開示するという姿勢が必要
 ・グロース市場に、成長に失敗した会社がそのまま残っていることも問題なので、そのような会社の退出も必要
 ・IPOというゴールだけではなく、未上場株式の流通市場の整備も必要

 上記コメントにはIPO全般に影響が生じる可能性もある論点も含まれますので、本会議の議論の動向には今後とも注視が必要です。

各テーマと現状分析

第2回本会議

 東証より前回本会議の議論の論点整理が示されると共に、「関係者ヒアリング」としてフィデリティ投信株式会社(以下、フィディリティ投信)および株式会社JPX総研(以下、JPX総研)から資料説明等が行われました。
 JPX総研からは、2025年1月までに移行期間が終了するTOPIXの見直しに関する状況等の説明があり、フィデリティ投信からは、サステナビリティの観点から主に下記の論点に関する説明があった模様です。

 ・サステナビリティに向けた取り組みについて、日本企業も改善が進んでいるものの、欧米企業と比較するとまだ出遅れている
 ・社外取締役に期待される役割の理解が不十分
 ・CG報告書におけるエクスプレインの記載内容が何年も同じ内容の会社があるなど、コンプライ・オア・エクスプレインが形骸化
 ・上場時期が古いほど、TOPIX企業はパフォーマンスが劣る傾向がある
 ・上場年数の長い企業ほど、政策保有株式に依存の傾向がある
 ・日本の新興市場は流動性が低く、機関投資家の投資対象にならないため、代表的な成長企業も市場を代表する株価指数に含めるべき

 上記の「関係者ヒアリング」の内容等も踏まえて、複数のメンバーが言及していたコメントや、特徴的な関連コメントとしては、下記が挙げられます。
 なお、IPOに特化したコメント等は、特段見受けられませんでした。
 
 ・市場区分の見直しに係るフォローアップやTOPIX指数の見直しについて、いずれも新陳代謝を促すような退出ルールの整備が必要ではないか
 ・一度上場したら安住出来るという意識があること自体を変えていく必要がある
 ・プライム市場でも半数近く存在するPBR1倍割れの企業の多さからも、企業に危機感が無いことが一番の問題と思われる

第3回本会議

 会議参加メンバーおよびゲスト参加のみずほ証券株式会社(以下、みずほ証券)からそれぞれ資料説明があり、中長期的な企業価値向上に向けた企業の取り組みを促していくためのアプローチに関して討議が行われたようです。
 具体的には、当該会議参加メンバーから『「サステナビリティ経営」の本質について』というテーマで、「サステナビリティ経営」についてや、当該会議参加メンバーが取締役に就任している上場会社における取り組みの説明がありました。
みずほ証券からは「発行会社視点に立った場合の市場区分についての所見」というテーマで説明がありました。
 現時点では、議事録は公開されていないため、IPOに特化したコメント等の有無については不明です。
 次回以降の本会議での議論テーマとしては、上場維持基準への適合に向けた取り組みや経過措置の在り方が挙げられる見込みです。
 なお、市場区分の見直しに関するフォローアップについて、2022年9月30日から東証による意見募集が開始されており、意見募集期間は2022年10月31日までとなっております。

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