電子帳簿保存法の改正点

 2021年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しに伴い、2021年3月31日付けで「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(以下「電子帳簿保存法」という。)」及び「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」(「電子帳簿保存法施行規則」)が改正されました。
 この改正において、国税関係帳簿書類及び電子取引の取引情報の保存制度の見直しがなされており、これらは2022年1月1日(※)から施行される予定です。
 本稿では、電子帳簿等保存制度の見直しの概略内容と、IPO準備会社について実務的に影響が考えられる事項等を中心に取りまとめております。
 
※2021年12月10日に公表された2022年度与党税制改正大綱に、2022年1月に施行する電子帳簿保存法に2年の猶予期間が設けられる旨の内容が盛り込まれました。
 なお、税制改正大綱には「所轄税務署への手続きを要せずにその出力書面等による保存を可能とするよう、運用上、適切に配慮することとする」との記載も有り、税務署への事前届け出等の手続きは不要となる見込みです。

電子帳簿保存法と今回の改正の背景等

 「電子帳簿保存法」は、国税関係帳簿書類の保存を従来の紙文書ではなく、電子データでの対応を認めた法律で、紙文書主体の手続きの電子化を促進する目的で1998年に制定されております。 
 その後、社会全体におけるDX化の推進の浸透に伴い、数度に渡って改正されておりますが、2021年度税制改正大綱における見直しにおいて、経済社会のデジタル化を踏まえ、経理電子化による生産性向上、テレワーク推進、記帳水準向上及び適正な課税の実現等の観点から、電子帳簿保存制度を抜本的に見直すこととなり、特に電子帳簿保存制度の各種要件見直しにより、利用促進が大いに期待されております。

電子帳簿保存法改正内容の特徴的な事項

 「電子帳簿保存法」の今回の改正について、特徴的事項は下記内容となります。

 

 導入に際しての事前の税務署の承認について大幅に緩和されます。

 

 電子データが作成された日時を確定する電子的な時刻証明書であるタイムスタンプ要件について緩和されます。

 

 電子データの事務処理に関する適正事務処理要件について改正前の事項が廃止されます。

 

 保存された電子データについての検索要件について緩和されます。

今回の電子帳簿保存法改正の留意点

 保存要件が厳しくなった点として、電子取引データを紙に印刷して保存することは不可となり、電子取引データは電子データのまま、訂正・削除履歴が残るシステムに保存し、検索などの要件を満たさなければ、税務エビデンスとして原則として認められないことになりました。 
 「電子帳簿保存法改正内容の特徴的な事項について」の①及び②で記載の通り、各種要件緩和が進み、導入がしやすい要件となる一方で、不正抑止の担保処置として、重加算税の加重措置が導入されることになりました。
 具体的には、適正な保存を担保するための制度として、スキャナ保存や電子取引の記録を正確に行わず、隠蔽や改ざんした事実があった場合には、その事実に関する申告漏れなどに課される重加算税が10%加重されることになりました。

IPO準備への影響等

 上場審査においては、電子帳簿保存法改正に対しての対応状況等が概括的に確認される可能性がありますが、上場準備スケジュールで直前々期以降に入っていて監査法人の監査を受けている企業については、電子帳簿保存法改正に関して監査上留意される事項に対して、より実務的な対応を求められる可能性が有ります。 

メルマガ登録

各種最新情報をお届けいたします。ぜひお役立てください。

メルマガのご登録はこちらから

お問い合わせ

まずはご相談からで結構です。お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちらから
メルマガのご登録はこちらから お問い合わせはこちらから