東証の新市場区分への移行関連について

 2021年2月15日に東証から、「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項に関するご説明資料)」(以下、「当該資料」)が公表されておりますが、当該資料は、2020年12月25日に東証から公表された「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」の内容について、より詳細に説明されており、項目によっては補足的・追加的な説明がされております。
 本稿では、当該資料の内容について、特に新規上場や上場後の市場区分の変更に関して補足的・追加的な説明がされた事項をいくつかピックアップしております。

最新の今後の移行スケジュール

新市場区分における上場基準の考え方

 各市場区分の新規上場基準と上場維持基準は、原則として共通化することとし、上場会社は、上場後においても継続して新規上場基準(の水準)を維持することが必要となります。(上場維持基準には、流動性や経営成績等に係る基準に加えて、市場区分毎に売買高基準等も含まれます。)
 各市場区分は、それぞれ独立しているものとし、現在の一部指定基準・指定替え基準・市場変更基準のような「市場区分間の移行」に関する基準は設けないこととされました。
 そのため、上場会社が、市場区分の変更を希望する場合には、変更先の市場区分における新規上場基準と同様の基準を改めて満たすことが必要となります。

上場審査基準

 スタンダード市場とプライム市場で共に設定されている上場審査項目の「企業の継続性及び収益性」について、審査の観点の違いが明示されました。
 スタンダード市場の上場審査では、「安定的な収益基盤」を確認することとしており、継続的に利益を計上できる見込みを確認することとされております。
 一方で、プライム市場の上場審査では、「安定的かつ優れた収益基盤」を確認することとしており、潤沢な流動性の基礎として定められた時価総額250億円の水準に照らして相応の利益を計上できる見込みを確認することとされております。
 プライム市場では、中長期的な企業価値向上のための投資等により一時的に赤字を計上している場合も上場可能です。

新規上場申請書類

 2020年12月25日の東証公表資料では、「新規上場申請書類については、現行制度を踏襲する」とされておりましたが、「スタンダード市場」及び「プライム市場」は「本則市場への新規上場申請書類を踏襲」、また、「グロース市場」は「マザーズへの新規上場申請書類を踏襲」と明確化されました。

申請によらない市場区分の変更

 新たな市場区分の下では、各市場区分をそれぞれ独立したコンセプトで運営していくことから、現行制度における市場第一部から市場第二部への指定替え制度のように各市場区分の上場維持基準に抵触した場合に、他の市場区分に自動的に変更されることはないこととなりました。
 上場維持基準に抵触し、改善期間内に改善が行われなかった場合には、他の市場区分への変更が自動的に行われることはなく、上場廃止となります。

市場区分の変更申請

 上場会社が市場区分の変更申請を行う場合も、新規上場申請時における標準審査期間と同様とされました。
 例外として、スタンダード市場又はプライム市場への市場区分の変更申請に際して、新規上場からの経過年数が3年以内であり、上場以降の組織体制や事業内容等に大きな変化が見られない場合においては、審査期間を2か月に短縮できるものとします。
 上場会社が市場区分の変更申請を行うにあたり、現在の市場区分に上場してから一定の期間の経過を必要とする要件は設定されないこととなりました。
 現在、市場第二部から市場第一部への指定申請にあたっては、主幹事証券会社から「確認書」を提出することとなっておりますが、市場区分の変更申請にあたって提出するものは「上場適格性調査に関する報告書」となり、「確認書」の内容に加えて、現行制度における「推薦書」及び「公開指導及び引受審査の過程で特に留意した事項及び重点的に確認した事項を記載した書面」に記載している内容を包含したものとなります。

流通株式の定義の内容

 現行制度では、上場株式数の10%以上を所有する場合に限り流通株式から除くこととしておりますが、市場における流動性(売買実績)が著しく低いことを踏まえ、上場株式のうち、国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等(金融機関及び金融商品取引業者以外の法人)が所有する株式については、上場株式数の10%未満を所有する場合であっても、流通株式から除くこととなり、直近の大量保有報告書等において所有目的が「純投資」と記載されており、所有目的が「純投資」であることが明らかな株式については、流通株式として取り扱うとされております。
 確認方法としては、客観性を確保する観点から、法定開示書類による確認を想定しており、原則として、大量保有報告書及び変更報告書(保有者が提出する有価証券報告書で確認が可能な場合は、有価証券報告書)に基づくことが想定されております。
 海外の「普通銀行、保険会社及び事業法人等」が所有する株式の取り扱いについては、今般の定義の変更では「国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等」所有分となっているため、上場株式数の10%以上を所有する場合を除き、流通株式として取り扱うこととされております。

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