コーポレートガバナンス・コードの一部改訂に係る上場制度の見直し

 東証の市場改革と並行してコーポレートガバナンス・コードの改訂も進められておりますが、2021年4月6日に、金融庁及び東証が事務局を務める「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」より、「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について」が公表されました。
 また、上記公表を受けて、2021年4月7日に、東証から市場区分の再編に係る第三次制度改正事項として、「フォローアップ会議の提言を踏まえたコーポレートガバナンス・コードの一部改訂に係る上場制度の見直しについて」が公表されております。
 本稿では、東証から公表された上記資料について、主なコーポレートガバナンス・コードの改訂予定内容の概略を取りまとめております。
 当該公表資料については 2021年5月7日まで意見募集を行っているため、今後の検討状況によっては内容の変更等が発生する可能性があります。
 IPO準備会社については、目標とする市場における改訂予定内容を踏まえて、今後の対応策を慎重に検討する必要があります。

一部改訂に係る上場制度の見直しの全体概要

 上場会社は、コードの改訂によってコーポレート・ガバナンスに関する報告書(以下、CG報告書)の内容に変更が生じたときは、準備ができ次第速やかに、遅くとも2021年12月末日までに変更後のCG報告書の提出が必要となります。
 本則市場の上場会社及び2021年11月1日以後に新規上場申請を行い、承認を受けたJASDAQの上場会社は、原則として、コードの改訂によってCG報告書の内容に変更が生ずるため、変更後のCG報告書の提出が必要となります。
 新たな市場区分におけるコンプライ・オア・エクスプレインとして、2022年4月4日以降、スタンダード市場及びプライム市場の上場会社は基本原則・原則・補充原則について、グロース市場の上場会社は基本原則について、コードの各原則を実施するか、実施しない場合にはその理由をCG報告書において説明することとなります。
 コードの改訂は2021年6月を目途に実施される予定ですが、プライム市場の上場会社のみを対象とするものについては、2022年4月4日から適用することとされております。

改訂内容の概略(2021年6月目途実施予定)

◇取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべき(補充原則2-3①)
◇女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべき(補充原則2-4①)
◇経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべき(補充原則3-1③)
◇取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定すべき(補充原則4-2②)
◇取締役会はグループ全体を含めた内部統制や先を見越した全社的リスク管理体制を構築すべき(補充原則4-3④)
◇プライム市場以外の上場会社においては、独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき(原則4-8)
◇業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場以外の上場会社は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべき(原則4-8)
◇支配株主を有するプライム市場以外の上場会社は、取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任するか、または支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置すべき(補充原則4-8③)
◇監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする独立した指名委員会・報酬委員会を設置することにより、指名や報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり、ジェンダー等の多様性やスキルの観点を含め、これらの委員会の適切な関与・助言を得るべき(補充原則4-10①)
◇独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべき(補充原則4-11①)
◇取締役会及び監査役会の機能発揮に向け、内部監査部門がこれらに対しても適切に直接報告を行う仕組みを構築すること等により連携を確保すべき(補充原則4-13③)
◇株主との実際の対話(面談)の対応者については、合理的な範囲で、経営陣幹部または、社外取締役を含む取締役または監査役が面談に臨むことを基本とすべき(補充原則5-1①)
◇経営戦略等の策定・公表に当たっては、取締役会において決定された事業ポートフォリオに関する基本的な方針や事業ポートフォリオの見直しの状況について分かりやすく示すべき(補充原則5-2①)

プライム市場限定の改訂内容の概略(2022年4月4日から適用予定)

◇株主総会における権利行使について、少なくとも機関投資家向けに議決権電子行使プラットフォームを利用可能とすべき(補充原則1-2④)
◇情報開示の充実として、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべき(補充原則3-1②)
◇気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)またはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべき(補充原則3-1③)
◇独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任すべき(原則4-8)
◇業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、少なくとも過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべき(原則4-8)
◇支配株主を有するプライム市場上場会社は、取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を少なくとも過半数選任するか、または支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置すべき(補充原則4-8③)
◇指名委員会・報酬委員会などの各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべき(補充原則4-10①)

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