2023年1月30日に東証から「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議の論点整理」及び「論点整理を踏まえた今後の東証の対応」が公表されました。
2023年3月31日に東証から、このうち3点に関して具体的に取りまとめられた内容が上場会社に通知されております。
本稿では、当該通知内容の概略を取りまとめております。
論点整理を踏まえた今後の東証の対応
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
プライム市場及びスタンダード市場の全上場会社が対象となっております。
次の項目の表の対応が要請されております。
具体的には①~③の一連の対応として、進捗状況に関する分析を行い、開示のアップデートを行うことを継続的(毎年、年1回以上)に実施することが要請されております。
要請項目
建設的な対話に資する「エクスプレイン」のポイント・事例
コーポレート・ガバナンスコードの原則に対して、自社の個別事情に照らして実施することが適切でないと考える場合の積極的なエクスプレインについては、形式的なコンプライよりも、評価に値するケースも少なくないとの指摘があります。
一方で検討中という説明のまま、数年間も同様な記載が継続的にされている事例がみられるなど、コンプライ・オア・エクスプレインが形骸化しているとの指摘もなされております。
そこで、建設的な対話に資する「エクスプレイン」を行うためのポイントとして、下記内容が例示されております。
・「エクスプレイン」を行う原則について、特に、一つの原則の中に実施している内容と実施していない内容がある場合は、それらを明確に示す
・実施していない内容について「現時点において実施しない理由(実施しないことが自社にとって適切である理由)」を、自社の個別事情や、採用している代替手段の取組内容及び当該取組みが自社にとって適切であると考える理由を踏まえて説明する
・今後コードを実施していく方針の場合、実施に向けた具体的な検討状況を、検討手法・プロセス、実施までの具体的なスケジュールなどを踏まえて説明する
投資者にとって説明が不十分と考えられる事例
株主との対話の推進と開示について
プライム市場の全上場会社が対象となっております。
具体的には、直前事業年度における経営陣等と株主との対話の実施状況等について、株主との対話の主な対応者やテーマ、株主の関心事項等について開示することが要請されております。
開示の形式については、アニュアルレポートや自社ウェブサイトの中で、開示を行っている旨やその閲覧方法(ウェブサイトのURLなど)について、コーポレート・ガバナンスに関する報告書の「コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示」の記載欄への記載が要請されております。
なお、開始時期については、できる限り速やかな対応が要請されており、毎年、事業年度終了後に更新することが想定されております。
IPO準備への影響
今般東証から公表された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」は、対象がプライム市場やスタンダード市場が中心となっています。
そのため両市場への上場を目指している会社は勿論のこと、グロース市場へのIPOを検討している会社で、グロース市場上場後に早期に両市場への市場変更を視野に入れている会社についても、IPO準備の段階から十分検討する必要があります。
また、2023年4月4日に東証から「東証上場会社 コーポレートガバナンス白書2023」が公表されており、今回の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」の関連事項だけではなく、コーポレートガバナンス・コード全体への対応についての検討にも資する資料となっております。
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