株式上場(IPO)するためには?レイターステージ編(上場1年前~上場)

「将来的に上場したいが、まず何をしたらいいんだろう?」
「上場準備を始めたばかりなので、上場するまでのスケジュールや主なタスク等、全体感を理解しておきたい」

そういったお悩みを持つ方に向けて、上場までのステップを上場準備のステージ毎に分かりやすく解説します。
今回は、上場1年前・直前期から上場まで、上場準備のレイターステージで対応すべきタスクを説明します。

J-SOX対応

 J-SOXとは、金融商品取引法に基づく、財務報告に係る内部統制報告制度を言います。J-SOXでは、決算書を作るまでのプロセスを見える化して、決算書が間違いなく作られるように、必要なチェックや承認が機能しているかを評価し、その結果を外部に報告することが求められます。
 上場後は、毎年、有価証券報告書とあわせて内部統制報告書を金融庁に提出しなければなりません。上場後に内部統制報告書を提出できるよう、直前期末までには決算書を作るまでのプロセスを見える化(文書化といいます)する必要があります。また、上場審査では、申請会社が上場後に内部統制報告書を提出できる体制となっているか確認されますので、しっかり準備しましょう。
 J-SOX対応で重要なのは、監査法人としっかりコミュニケーションしながら進めることです。内部統制報告書は、毎年、監査法人の監査を受けなければいけません。 なお、上場後3年間(資本金100億円以上又は負債総額1,000億円以上の会社を除く)は免除されています。仮に監査法人と協議せずに進めてしまうと、後戻りが生じたり、手続きに不備が生じたりして、大変効率が悪くなります。ゆくゆく監査法人が監査することを考慮すると、監査法人と協議しながら、監査法人からOKと言っていただけるよう、準備することが重要です。

上場申請書類(Ⅰの部)の作成

 上場申請書類(Ⅰの部)とは、直前々期と直前期の決算情報を中心とした上場申請書類で、監査法人の監査を受けなければいけません。上場時には、目論見書や有価証券届出書として、投資家に開示されます。また、上場後は有価証券報告書という形で、毎年作成し開示する必要があります。
 Ⅰの部は金融商品取引法をはじめとした法令に基づき正確に記載する必要があります。このため、監査法人出身者や上場会社での開示経験者等をアサインして、監査法人と協議しながら作成することが必要です。

上場申請書類(Ⅱの部・JQレポート・マザーズ各種説明資料 )の作成

 上場申請書類(Ⅱの部・JQレポート・マザーズ各種説明資料、以下、Ⅱの部等)ですが、企業や事業の内容、経営管理体制に関する分野を中心として構成され、上場審査の基礎となる重要な書類となります。またⅠの部と異なり、上場審査のためだけに作成・使用する書面となり、投資家に公開されることはありません。なお、上場しようとする市場で作成する書面が異なり、東証1部2部であればⅡの部、ジャスダックであれば JQレポート、マザーズであれば マザーズ各種説明資料となり、それぞれ記載項目や分量が異なります。上場審査はⅡの部等の記載に基づき進められますので、会社の実態に即した正確な記載が求められます。

上場審査対応

 上場審査には2つあり、主幹事証券会社による審査(証券審査)と、証券取引所による審査(取引所審査)があります。証券審査に合格すると、主幹事証券会社による推薦を頂くことができます。主幹事証券会社の推薦状をもって、証券取引所に上場申請し、審査に合格すると、上場承認を経て、無事、上場となります。
 証券審査、取引所審査ともに、事前に提出する、Ⅰの部やⅡの部等、その他の書面をもとに、まずは書面で質問状をやりとりし、書面回答とあわせてヒアリングで確認する、という形式で進められます。質問状が到着してから回答期限まで、通常1-2週間程度しかなく、1回の質問数は数百問になります。タイトなスケジュールで大量の質問に回答しなければならず、かつここで回答する内容は、申請会社が作成した他の書面や実態と整合していなければなりません。質問状が到着するまでに、どのような体制で回答書を作成していくのか、プロジェクト管理が重要となります。

ファイナンス手続

 審査が無事終わり、上場承認されると、機関投資家をまわり、申請会社の事業内容や成長性を説明します(ロードショー)。その後、主幹事証券会社は申請会社の株をいくらぐらいなら買ってくれそうか、ヒアリングをします。ヒアリング後は、機関投資家等による入札が行われ(ブックビルディング)、公開価格が決定されます。

上場

 晴れて上場です。会社の株は市場で売買されることになり、テレビでお馴染みの東証アローズの電光掲示板に、会社名と株価が表示されるようになります。また上場日には、東証アローズで上場セレモニーが行われます。

いかがでしたでしょうか。これまで3回にわたって上場準備の流れをご説明しました。限られたリソースでスケジュール通りに上場するためには、関係各所と連携しながら、各タスクをタイミングよく着実にこなす必要があります。タスクに抜けや漏れがあると、後戻りすることになり、上場が後ろ伸ばしになります。本稿が皆様のスケジュール通りの上場にお役に立てれば幸いです。

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